LDLとHDLの違いとは?脂質指針と目標値を薬剤師が解説
最終更新日: 2026-09-07
📋 この記事のポイント
  • ✓ LDLは細胞にコレステロールを運ぶ「悪玉」、HDLは回収する「善玉」という明確な役割の違いがあります
  • ✓ 基準値はLDLが140mg/dL未満、HDLが40mg/dL以上ですが、個人の病歴やリスク因子で目標値は変動します
  • ✓ 脂質異常症の改善には飽和脂肪酸を控える食事や有酸素運動が有効であり、必要に応じて薬物治療を行います
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当薬局の調剤・服薬指導に関する情報が含まれます。
コレステロールは、私たちの体を維持するために欠かせない脂質の一種です。健康診断の血液検査などでよく目にする「LDL」と「HDL」ですが、その性質や役割には真逆とも言える大きな違いがあります。一般的に、LDLは「悪玉コレステロール」、HDLは「善玉コレステロール」と呼ばれ、これらのバランスが崩れると動脈硬化などの病気が進行する原因となります。この記事では、薬剤師の専門的知見のもと、LDLとHDLの根本的な違いから、それぞれの検査値の見方、健康を維持するための目標値、そして日常生活での具体的な改善方法までを分かりやすく解説します。

LDLとHDLの違いとは?脂質の基本を理解する

血液検査で測定されるLDLコレステロールとHDLコレステロールの最大の違いは、体内における「運搬の方向性」にあります。これらはどちらも同じコレステロールを運んでいますが、目的地と役割が異なります。

コレステロールそのものは水に溶けない性質を持っているため、そのままでは血液中を移動することができません。そのため、タンパク質やリン脂質でできた「カプセル」のような複合体を形成して血流に乗ります。このカプセルのことを「リポタンパク質」と呼びます[1]

LDL(低比重リポタンパク質)
肝臓で作られたコレステロールを、全身の細胞や末梢組織へ送り届ける役割を持つリポタンパク質。増えすぎると血管壁に脂質が沈着し、動脈硬化の原因となります。
HDL(高比重リポタンパク質)
全身の余分なコレステロールや血管壁に溜まった脂質を回収し、肝臓へと戻す役割を持つリポタンパク質。血管内を掃除して綺麗に保つ働きがあります。

コレステロールは体内でどのような働きをしている?

「コレステロール」と聞くと、健康に悪い油というイメージを持つ方が少なくありません。しかし、コレステロールは人間が生きていく上で絶対に欠かせない重要な物質です。主に以下の3つの役割を担っています[1][2]

  • 細胞膜の構成成分:体を構成する約37兆個もの細胞の壁(細胞膜)を作る主材料となります。
  • ホルモンの原料:副腎皮質ホルモン(体内の代謝やストレスに対抗するホルモン)や、エストロゲン・テストステロンなどの性ホルモンの原料になります。
  • 胆汁酸の原料:小腸での脂肪の消化・吸収を助ける「胆汁酸」を作るために消費されます。

体内にあるコレステロールの約7〜8割は肝臓で合成されており、食事から摂取される割合は2〜3割に過ぎません。体内の脂質レベルは常に一定に保たれるよう自律的に調整されていますが、遺伝的要因や生活習慣の乱れによってそのバランスが崩れることがあります。

リポタンパク質とは何?

コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)は、水に馴染まない疎水性の物質です。これを水分主体の血液中で運ぶため、表面が水になじみやすい親水性のタンパク質(アポタンパク質)やリン脂質で覆われた、球状の粒子(リポタンパク質)を形成します。リポタンパク質は、比重(密度)の違いによって主に以下の4種類に分類されます[2]

  1. カイロミクロン:食事から吸収された脂質を小腸から運ぶ、最も大きくて軽い粒子。
  2. VLDL(極超低比重リポタンパク質):肝臓で合成された中性脂肪を多く含む粒子。
  3. LDL(低比重リポタンパク質):VLDLから中性脂肪が抜け、コレステロール比率が高くなった粒子。
  4. HDL(高比重リポタンパク質):最も小さく、タンパク質の含有量が多いため最も重い粒子。

なぜLDLは「悪玉」、HDLは「善玉」と呼ばれるのか?

LDLコレステロールが「悪玉」、HDLコレステロールが「善玉」と呼ばれる理由は、血管や動脈硬化の進行に与える影響が正反対だからです。決してLDL自体が体にとって有害な毒素というわけではありません。

LDLは肝臓から全身へコレステロールを供給する「デリバリー業者」です。健康な状態であれば、細胞が必要とする分だけが効率よく取り込まれます。しかし、血液中のLDLが過剰になると、細胞で消費しきれなかった余剰分が血液中に長く留まり、活性酸素などによって酸化されてしまいます。酸化されたLDLは血管の内膜に入り込みやすく、これが動脈硬化の起点となります[3]

一方でHDLは、全身を巡りながら、血管の壁や細胞に余って放置されているコレステロールを回収する「回収業者(掃除機)」の役割を担っています。回収されたコレステロールは肝臓へ持ち帰られ、再び再利用されるか、胆汁酸に変換されて体外へ排泄されます。つまり、HDLが多いということは、血管壁への脂質沈着を防ぎ、綺麗に保つ能力が高いことを意味します。

LDLコレステロール(悪玉)の役割と血管への影響

血液中にLDLコレステロールが過剰に存在すると、血管の内膜(一番内側の層)の傷ついた部分から脂質が侵入します。これを体内の免疫細胞である「マクロファージ」が異物として認識し、次々と貪食(取り込み)します。限界までコレステロールを溜め込んだマクロファージは死滅し、血管壁にドロドロとしたお粥のような物質(プラーク、アテローム)となって堆積します[3]。これにより血管の通り道が狭くなり、弾力性が失われていくプロセスが「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」です。

HDLコレステロール(善玉)の役割と血管の掃除

HDLは、ただ脂質を回収するだけでなく、血管を保護するさまざまな優れた作用を持っています。HDLには、血管内皮細胞の機能を維持して血管を拡張させる作用や、炎症を鎮める抗炎症作用、LDLの酸化を防ぐ抗酸化作用があることが分かっています。したがって、HDLが十分に高いことは、心血管疾患をはじめとする血管系トラブルを予防するための強力な防御因子となります。

LDLとHDLの基準値と目標値は?

健康診断における脂質項目の基準値は、動脈硬化を予防するために「日本動脈硬化学会」などのガイドラインによって定められています[4]。基準値は一般的な「健康とされる人の範囲」を示すものですが、治療における具体的な目標値は患者さま個人の持病や背景によって個別化されます。

服薬指導の際に、患者さまから「健診でLDLが少し高いと言われたけれど、すぐに薬を飲まなければいけないの?」と相談されることがよくあります。当薬局の調剤経験では、検査値の単純な高低だけでなく、年齢、性別、喫煙の有無、血圧、血糖値などのリスク因子を総合的に評価し、医師が治療方針を決定しているケースがほとんどです。検査結果の数値一つで一喜一憂せず、全体像を把握することが大切です。

検査項目正常範囲(基準値)異常値の定義(脂質異常症)
LDLコレステロール120mg/dL未満140mg/dL以上(高LDLコレステロール血症)
※120〜139mg/dLは「境界域」
HDLコレステロール40mg/dL以上40mg/dL未満(低HDLコレステロール血症)
トリグリセリド(中性脂肪)150mg/dL未満(空腹時)150mg/dL以上(高トリグリセリド血症)

脂質異常症の診断基準とは?

脂質異常症(かつては高脂血症と呼ばれていました)は、血液中のコレステロールや中性脂肪が基準値から外れている状態を指します。具体的には、上記の表の通り「LDLコレステロールが140mg/dL以上」、「HDLコレステロールが40mg/dL未満」、「トリグリセリドが150mg/dL以上」のいずれかに該当する場合に診断されます[4]

このうち、LDLが境界域(120〜139mg/dL)であっても、糖尿病や高血圧などの合併症がある場合は、早期に対策を始める必要があるため注意を要します。

リスク区分に応じた管理目標値

健康診断書に記載されている「基準値」は一般向けですが、日本動脈硬化学会は個人個人の「動脈硬化リスク」に応じた管理目標値を定めています。例えば、過去に心筋梗塞などの冠動脈疾患を起こしたことがある二次予防(再発予防)の対象者は、LDLコレステロールを「70mg/dL未満」という非常に低いレベルまでコントロールすることが推奨されます[4]。また、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、末梢動脈疾患などのリスク因子を複数お持ちの方も、一般基準より厳しい「100mg/dL未満」や「120mg/dL未満」といった目標が設定されます。

異常値が続くリスクとは?動脈硬化との関係性

LDLコレステロールが高く、HDLコレステロールが低い状態を放置し続けると、自覚症状がないまま血管の老化(動脈硬化)が徐々に進行していきます。脂質異常症は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれるほど、重大な局面を迎えるまで症状が現れません。

調剤の現場では、心筋梗塞や脳梗塞を発症した後に、再発予防のために強い脂質低下療法を始められる患者さまを数多くサポートしてきました。初期には自覚症状が全くないため、「体がどこも痛くないし、症状がないから」と服薬を自己中断してしまい、のちに救急搬送されるような重篤な事態を招くケースも見られます。健康診断でのわずかな異常を軽視せず、早期からコントロールすることがいかに重要であるかを、臨床の場面で日々痛感しています。

⚠️ 注意点

脂質異常症はどれほど進行しても自覚症状がありません。「手足が冷える」「肩がこる」といった軽い症状をコレステロールのせいだと思い込んでいる間に、心臓や脳の血管では狭窄(狭くなること)が静かに進んでいる危険があります。定期的な検査を必ず受けてください。

動脈硬化がもたらす重大な合併症

血管が細くなり、プラークが崩壊して血管内で血液の塊(血栓)が詰まると、血流が遮断されて周囲の細胞が壊死します。これにより生じるのが、以下の致死的な合併症です[5]

  • 心筋梗塞・狭心症:心臓の筋肉に酸素を送る「冠動脈」が詰まる、または狭くなることで激しい胸痛を伴う病気。
  • 脳梗塞:脳の血管が詰まることで、半身麻痺や言語障害、最悪の場合は命に関わる後遺症を残す病気。
  • 閉塞性動脈硬化症:足の血管が詰まり、歩くときに痛みが生じ、重症化すると足の組織が壊死して切断を迫られる病気。

脂質異常症を改善するための食事と生活習慣

LDLを下げる、またはHDLを増やすためのファーストステップは、一過性のダイエットではなく、持続可能な食事管理と適度な運動習慣の構築です。これらは薬に頼らず数値を最適化するための極めて有効なアプローチとなります。

当薬局では、食事制限を頑張りすぎてストレスを抱えてしまう患者さまの相談を受けることが多いです。極端な制限をして長続きしないよりも、例えば「主食を白米から玄米や雑穀米に変える」「脂っこいバラ肉を避けて、鶏むね肉や魚の頻度を週に1〜2回増やす」といった、生活に馴染む具体的な工夫から一緒に考えるよう心がけています。無理なく続けられる小さな工夫の積み重ねこそが、確実な数値改善への近道です。

食事療法:何を食べて、何を控えるべき?

食事から摂取するコレステロール自体を極端に控えることよりも、体内でコレステロール合成を促す「飽和脂肪酸」を減らすことの方が、血中LDLを下げる効果が期待できます[6]

  • 控えるべきもの(飽和脂肪酸):バラ肉、ひき肉、バター、ラード、生クリーム、パーム油、スナック菓子など。
  • 積極的に摂るべきもの(不飽和脂肪酸):サバやイワシなどの青魚(EPA・DHAが豊富)、オリーブオイル、アボカドなど。これらはLDLを下げ、血液をサラサラにする効果があります。
  • 食物繊維(特に水溶性):大麦、オーツ麦、海藻類、こんにゃく、キノコ類、野菜。水溶性食物繊維は、腸管内でコレステロールを吸着して体外への排泄を促します[6]

運動療法:HDLを増やしLDLを下げる運動とは?

運動は、特に「HDLコレステロール(善玉)を増やす」ために非常に有効な手段です。運動を継続することで、筋肉内の酵素であるリポタンパクリパーゼ(LPL)が活性化され、中性脂肪が分解されるとともにHDLが作られやすくなります[7]

推奨される運動は、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの「有酸素運動」です。強度としては「軽く息が弾み、汗ばむ程度(中強度)」が最適で、1日合計30分以上、週に3回以上(できれば毎日)行うことが推奨されます。1回10分の細切れの運動を合計して30分にしても同様の効果が得られます。

生活習慣の改善:禁煙とアルコール制限

喫煙はHDL(善玉)を著しく低下させ、さらにLDLの酸化を促進して動脈硬化を急速に加速させる最大の害悪です[4]。禁煙するだけでHDLが速やかに上昇することがデータで示されています。また、過度な飲酒は中性脂肪の上昇を招き、脂質バランスを乱すため、アルコールは適量(純アルコール換算で1日20g程度、ビールなら500ml缶1本まで)に留め、週に数日は休肝日を設けることが基本です。

薬物治療が必要になるのはどのような場合?

生活習慣の改善を数ヶ月間(通常は3〜6ヶ月程度)真摯に行っても、目標値に達しない場合や、動脈硬化のリスクが極めて高い(糖尿病、高血圧、過去の心筋梗塞などがある)場合は、速やかに薬物治療が開始されます。これは、血管への慢性的なダメージを最小限に食い止めるための積極的な処置です。

当薬局では、スタチン系製剤を服用中の患者さまから、筋肉痛のような痛み(横紋筋融解症の初期症状)や、手指のこわばりといった自覚症状に関するフィードバックをいただくことがあります。このような副作用のわずかなサインを見逃さず、迅速に処方医と連携して服薬の継続や種類の変更などをサポートしています。お薬への不安を取り除き、納得して継続していただけるよう努めています。

薬物治療を開始する判断基準

薬物療法への移行は、現在の脂質数値の高さだけでなく、患者さまの総合的な「10年以内の冠動脈疾患の発症予測」に基づいて医師が慎重に決定します[4]。特に高血圧、糖尿病、喫煙、加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、家族性高コレステロール血症などの危険因子がある場合は、早めの薬物導入が動脈硬化の予防に効果逆であると証明されています。

代表的な脂質低下薬の種類と特徴

医療現場で使用される主な治療薬には以下のような種類があり、患者さまの脂質パラメータ(LDLが高いのか、中性脂肪が高いのかなど)に合わせて最適なものが選ばれます。

  • HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン):肝臓でのコレステロール合成を強力にブロックする、LDL低下療法の第一選択薬(プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンなど)。
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:食事や胆汁由来のコレステロールが小腸から吸収されるのを抑える薬(エゼチミブなど)。スタチンと併用されることが多いです。
  • フィブラート系薬:主にトリグリセリド(中性脂肪)を強力に下げ、HDLを増やす効果がある薬(フェノフィブラート、ペマフィブラートなど)。
  • 陰イオン交換樹脂(レジン):腸内で胆汁酸を吸着・排泄させ、肝臓にコレステロールを消費させることでLDLを下げる薬(コレスチミドなど)。

まとめ

LDLとHDLは、どちらも体にとって必要なコレステロールを運ぶ重要な役割を担っていますが、「全身に届ける悪玉(LDL)」と「余剰分を回収する善玉(HDL)」という根本的な役割の違いがあります。これらのバランスが崩れ、血液中のLDLが増えすぎたりHDLが減りすぎたりすると、無症状のまま動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった危険な病気を引き起こす要因となります。

健康を守るためには、健康診断の数値を正しく把握し、一般基準値(LDL140mg/dL未満、HDL40mg/dL以上)を目安としつつ、個々の病歴に合わせた目標値を維持することが欠かせません。まずは、飽和脂肪酸を減らして食物繊維を摂る食事療法や、定期的な有酸素運動といった生活習慣の改善を心がけましょう。数値が十分に改善しない場合は放置せず、医療機関と相談のうえ、スタチンをはじめとする適切なお薬による治療を検討してください。

よくある質問(FAQ)

質問1: LDLコレステロールが高いと、体にどのような自覚症状が現れますか?
脂質異常症には基本的に全く自覚症状がありません。血管にプラークが溜まり、血管が限界まで狭くなったり詰まったりして初めて、胸痛(狭心症)や麻痺(脳梗塞)などの激しい症状として現れます。したがって、自覚症状がないからといって健診結果を放置するのは非常に危険です。
質問2: 健診で「LH比」という言葉を見かけました。これは何ですか?
LH比とは、「LDL値 ÷ HDL値」で計算される脂質バランスの指標です。それぞれの数値が基準値内であっても、LH比が2.0以上になると動脈硬化のリスクが高まり、2.5以上になると血栓を作るリスクが上昇すると言われています。一般的には1.5以下に保つことが望ましいとされています。
質問3: 薬を飲み始めたら、一生飲み続けなければならないのでしょうか?
必ずしも一生飲み続けるとは限りません。お薬を服用して数値が安定した段階で、食事や運動、禁煙などの生活習慣がしっかりと定着していれば、医師の判断で減薬や休薬に踏み切るケースもあります。ただし、遺伝的にコレステロールが上がりやすい体質の方(家族性高コレステロール血症など)は、長期間にわたる内服の継続が必要となる傾向があります。自己判断で中止せず医師と相談しましょう。
質問4: 卵はコレステロールが高いから、絶対に食べない方が良いですか?
「絶対に食べてはいけない」というわけではありません。食事から摂るコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は個人差が大きく、健康な人であれば1日1個程度を摂取しても大きな問題にはならないことが多いです。ただし、すでに高LDL血症と診断されている方や、体質的にコレステロールの吸収率が高い方は、卵類やレバーなどのコレステロール含有量が多い食品を控えめにする必要があります。
この記事の監修
💼
小林瑛
管理薬剤師・旭薬局池袋店
💼
佐藤義朗
薬剤師・有限会社旭商事 代表取締役