整腸剤の種類と効果|ビオフェルミン・ミヤBMの違い
最終更新日: 2026-09-13
📋 この記事のポイント
  • ✓ 整腸剤は含まれる「善玉菌」の種類によって特徴が異なり、ビオフェルミンは主に乳酸菌、ミヤBMは酪酸菌を含んでいます。
  • ✓ ビオフェルミンは腸内を酸性に保ち悪玉菌を抑え、ミヤBM(酪酸菌)は抗生物質に強く大腸のエネルギー源となる酪酸を作ります。
  • ✓ 症状や併用するお薬(特に抗生物質)に合わせて、適切な整腸剤を選択することが腸内環境改善の鍵となります。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当薬局の調剤・服薬指導に関する情報が含まれます。

整腸剤とは?お腹の調子を整える仕組みと基本

整腸剤は、お腹の調子を整えるために使用される医薬品や医薬部外品であり、その主な役割は腸内に存在する「善玉菌」を補い、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを健全な状態に導くことです。腸内には100兆個以上もの細菌が棲みついており、身体に良い影響を与える「善玉菌」、悪い影響を及ぼす「悪玉菌」、どちらにも傾き得る「日和見(ひよりみ)菌」の3つが絶妙なバランスを保っています。しかし、ストレスや不摂生、感染症、抗菌薬(抗生物質)の服用などによってこのバランスが崩れると、便秘や下痢、腹部膨満感といったさまざまな不調が現れます。整腸剤はこれらの崩れたバランスを修復するための頼もしいサポート役となります。

整腸剤に含まれる善玉菌は、主に乳酸や酪酸といった「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」を作り出します。短鎖脂肪酸は腸内を酸性に傾ける働きがあり、これにより酸性の環境を嫌う悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌が定着しやすい環境を整えます。また、腸のぜん動運動を適度に刺激して便通を促す効果や、腸粘膜のバリア機能を高める効果など、多角的なアプローチでお腹の健康を維持しているのです。

腸内フローラ(ちょうないふろーら)
腸の中に生息している多種多様な細菌が、まるで満開の畑(フローラ)のように群生している状態のこと。健康な腸内では善玉菌が優勢に保たれています。
短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)
腸内細菌が食物繊維などを発酵・分解する過程で作り出す有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)のこと。腸のエネルギー源や防御機能を担います。

主な整腸剤の種類と特徴は?配合菌から見る選び方

整腸剤と一口に言っても、医療現場やドラッグストアで扱われる製品には多くの種類が存在し、それぞれに含まれる「菌の種類」によって得意とする作用や適応が異なります。代表的な医療用整腸剤である「ビオフェルミン(主に乳酸菌やビフィズス菌)」や「ミヤBM(酪酸菌)」、さらには複数の菌を組み合わせた「ビオスリー」など、目的に応じて使い分けられています。

当薬局の調剤経験では、便秘や下痢といった症状そのものへのアプローチだけでなく、現在服用中のお薬との飲み合わせを考慮して、最適な整腸剤を選択することが極めて重要です。特に、風邪や感染症の治療で処方される「抗生物質」は、病気の原因菌だけでなく腸内の善玉菌まで一緒に退治してしまうため、抗生物質に負けない特殊な整腸剤を選ぶ必要があります。服薬指導の際には、患者さまから「家にある市販のビオフェルミンを一緒に飲んでもいいですか?」と質問されることがよくありますが、通常の乳酸菌は抗生物質によって死滅してしまうため、薬局では抗生物質に耐性を持つ専用の「耐性乳酸菌製剤」や「酪酸菌製剤」をご案内しています。

製品名(一般名)主な配合菌特徴・得意な作用抗生物質との併用
ビオフェルミン配合散/錠ビフィズス菌、アシドフィルス菌など小腸から大腸まで広くアプローチし、マイルドに便通を整える。不可(抗生物質により菌が死滅する)
ビオフェルミンR耐性乳酸菌抗生物質に対して抵抗性を持つように開発された乳酸菌。推奨(指定の抗生物質と併用可能)
ミヤBM(ミヤリサン)酪酸菌(宮入菌)芽胞(殻)を形成するため胃酸や熱に強く、大腸に直接届いて働く。可能(多くの抗生物質に耐性を持つ)
ラックビービフィズス菌大腸に多く存在するビフィズス菌を補い、便秘や軟便を改善する。不可(ラックビーRという耐性製剤もある)
ビオスリー糖化菌、乳酸菌、酪酸菌3つの菌が互いを助け合い(共生)、単独よりも増殖力がアップする。不可(抗生物質併用時は注意が必要)

ビオフェルミンの効果と配合されている善玉菌の役割

「ビオフェルミン」は、日本で最も知名度が高いと言っても過言ではない、歴史のある整腸剤です。医療用として処方される「ビオフェルミン配合散・錠」には、乳酸を産生してお腹の中を弱酸性に保つ乳酸菌(アシドフィルス菌)や、大腸で働き排便をスムーズにするビフィズス菌などがバランスよく配合されています。これらの善玉菌が小腸から大腸にわたる広範囲で活動することで、腸内の有害な悪玉菌の増殖を抑え、ガス溜まりによるお腹の張りや、下痢、便秘などの諸症状を穏やかに和らげます。小児の急性胃腸炎患者を対象とした日本のプロバイオティクスに関するメタアナリシスにおいても、適切な乳酸菌・ビフィズス菌製剤の介入が、罹病期間の短縮や症状の早期改善に寄与することが示唆されています[1]。

調剤の現場では、特にお子さまの軟便や下痢に対してビオフェルミン(散剤)がよく処方されます。お腹が緩くなりやすいお子さまの保護者の方から「どの整腸剤が良いか」と相談を受ける際、乳酸菌やビフィズス菌製剤の継続的な服用が有用であると指導しています。また、当薬局では「飲み始めてすぐに劇的な変化がない」とおっしゃる患者さまに対し、まずは2週間ほど継続して服用いただくよう説明しています。腸内細菌の入れ替わりには一定の時間がかかるため、毎日規則正しく服用することで、少しずつ腸内のベースが整い、自然な形での便通改善を実感される方が多いからです。

ただし、通常のビオフェルミンは抗菌薬(抗生物質)に対して非常に弱いため、肺炎や中耳炎などで抗生物質が一緒に処方される場合には注意が必要です。抗生物質を服用しながら整腸効果を得るためには、抗生物質に対する耐性を持たせた「ビオフェルミンR」という専用の処方薬を使用する必要があります。これにより、抗生物質を服用しても整腸剤の中の菌が死滅せず、抗生物質の副作用である下痢を防ぐことが可能となります。

ミヤBMの効果と酪酸菌(宮入菌)の強み

「ミヤBM」は、主成分として「酪酸菌(宮入菌:ミヤイリキン)」を含有している医療用整腸剤です。酪酸菌の最大の特徴は、環境が厳しくなると「芽胞(がほう)」と呼ばれる極めて頑丈な殻を形成することにあります。この殻のおかげで、ミヤBMは強力な胃酸や胆汁酸にさらされても死滅することなく、生きたまま大腸まで届くことができます。さらに、熱や乾燥に強いだけでなく、多くの抗生物質に対しても天然の耐性を持っているため、通常の抗生物質と一緒に服用しても死滅せず、その高い整腸効果を維持できるという圧倒的な強みがあります。

酪酸菌が産生する「酪酸」は、大腸の上皮細胞(大腸の壁を構成する細胞)にとって最も重要なエネルギー源となります。これにより大腸のバリア機能が強化され、腸全体の水分吸収や電解質の調整が正常に行われるようになります。医学的な研究においても、酪酸菌(Clostridium butyricum)とビフィズス菌を組み合わせることで、抗生物質による下痢(抗生物質起因性下痢症)を呈したモデルにおいて、腸内細菌叢の速やかな回復と全身の炎症抑制効果が認められています[2]。さらに、がん治療における補助療法としても、酪酸菌が腸内細菌叢の質を向上させることが報告されているほか[3]、小児の肺炎治療において抗生物質と酪酸菌・ビフィズス菌の併用粉末を投与したところ、下痢の発症頻度が著しく減少したという多施設共同臨床試験データもあります[4]。

当薬局では、抗生物質が処方された際に「過去に抗生物質でお腹を下したことがある」と仰る患者さまに対して、この芽胞を持つミヤBMが一緒に処方されているかを確認し、服用タイミングなどを詳しく説明しています。特にミヤBMを服用されている患者さまからは、「他のお薬でお腹を下しやすかったが、ミヤBMを一緒に飲むようになってからお腹が安定するようになった」というポジティブなフィードバックをいただくことが多いです。また、ミヤBMは細粒剤や錠剤があり、小さなお子さまから高齢の方まで幅広く、安定した治療効果を提供できるため、医療現場で非常に重宝されています。

整腸剤の適切な飲み方やタイミングとは?

整腸剤の効果を最大限に引き出すためには、服用する「タイミング」や「期間」が重要な要素となります。一般的に、生きた菌を配合している整腸剤は、胃酸の影響を最も受けやすい「食前(空腹時)」を避け、胃酸が食事によって希釈されている「食後」に服用することが推奨されています。強酸性の胃環境を避けることで、より多くの生きた善玉菌を安全に小腸や大腸へと届けることができるからです。

ただし、ミヤBM(酪酸菌)のように「芽胞」を形成する菌株については、強固な殻が酸から身を守るため、食前・食後を問わずいつでも安定した効果を発揮します。それでも、他のお薬や食事の習慣との兼ね合いから、基本的には毎食後の服用で処方されることが大半です。実際の処方パターンとして、1日3回、毎食後に処方されるケースが圧倒的に多く、飲み忘れを防ぐ意味でも生活リズムに合わせやすいタイミングと言えます。また、整腸剤は1回や2回飲んだだけで劇的にお腹の環境が変わるわけではなく、腸内で善玉菌が徐々に増殖し、腸内環境が書き換えられるまでには最低でも数日、多くは1〜2週間程度の継続服用が必要となります。

⚠️ 注意点

医師から抗生物質(抗菌薬)を処方された場合、自己判断で市販の一般的な乳酸菌入り整腸剤を併用しないでください。多くの乳酸菌は抗生物質によって死滅してしまうため、効果が期待できません。抗生物質と併用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談し、「ミヤBM」や、抗生物質に耐性を持つ「R」とつく耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンRなど)を使用するようにしてください。

服薬指導の際に、患者さまから「効果を感じられないから多めに飲んでもいいですか?」と質問されることがよくあります。しかし、整腸剤を一度に多量に服用しても、その効果が倍増するわけではありません。過剰に摂取した菌はそのまま便として体外に排出されてしまうため、大切なのは「推奨された用法用量を守り、毎日コツコツと継続すること」です。当薬局では、お腹の調子が安定しない患者さまに対し、生活習慣の改善(十分な水分摂取や食物繊維の摂取)と合わせて、適切な用量を守るよう丁寧なアドバイスを行っています。また、お薬手帳を確認し、他院から別の整腸剤が重複して処方されていないかどうかも常にチェックしています。

まとめ

整腸剤は、お腹の健康の土台となる「腸内フローラ」を整え、便秘や下痢などのトラブルを改善するための優れたお薬です。乳酸菌やビフィズス菌を主軸とした「ビオフェルミン」は小腸から大腸まで広範囲の環境をマイルドに整え、一方の「ミヤBM」は熱や胃酸、さらには抗生物質にも強い「酪酸菌(宮入菌)」によって、大腸のエネルギー源を直接生み出すという強力な特徴を持っています。当薬局では、患者さまの具体的な症状や併用薬(特に抗生物質の有無)を細かく聞き取り、お一人おひとりに最適な整腸剤を安心して服用いただけるよう、きめ細やかなサポートと情報提供を徹底しています。便通の崩れや、お薬の飲み合わせでお悩みの際は、ぜひお気軽に薬剤師までご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1: ビオフェルミンとミヤBMは一緒に飲んでも大丈夫ですか?
はい、一緒に服用しても問題ありません。むしろ、ビオフェルミンに含まれる乳酸菌・ビフィズス菌と、ミヤBMに含まれる酪酸菌は腸内での生息場所や役割が異なるため、併用することでお互いの働きを助け合い、より優れた整腸効果が期待できる場合があります。ただし、同じような整腸剤が複数の病院から重複して処方されている場合は、医師や薬剤師にご確認ください。
Q2: 整腸剤は毎日飲み続けても問題ありませんか?副作用はありますか?
整腸剤は非常に安全性が高いお薬であり、毎日飲み続けても依存性を生じることはありません。配合されているのは体にとって有益な善玉菌(乳酸菌、酪酸菌、糖化菌など)であるため、副作用が起こる頻度は極めて低いです。ただし、体質によってはお腹が一時的に張ったり、便が緩くなったりすることが稀にあります。症状が続く場合は一度服用を中止し、専門医や薬剤師にご相談ください。
Q3: 市販の整腸剤と病院でもらう整腸剤(医療用)にはどのような違いがありますか?
一番大きな違いは「抗生物質と一緒に飲める耐性製剤(ビオフェルミンRなど)があるかどうか」という点です。市販の整腸剤には基本的に抗生物質耐性の菌は含まれていません。また、配合されている菌の株(種類)や含有量、添加物にも細かな違いがあります。日常的な健康維持や軽い便秘・軟便であれば市販薬でも十分に対応可能ですが、特定の治療を受けている方や症状が重い場合は、医療用整腸剤の処方を受けることをお勧めします。
この記事の監修
💼
小林瑛
管理薬剤師・旭薬局池袋店
💼
佐藤義朗
薬剤師・有限会社旭商事 代表取締役